STRATEGIST
『戦略の冒険者』空の戦略論
ドゥーエ/ミッチェル
DOUHET/MITCHELL
ドゥーエ/ミッチェル
ジュリオ・ドゥーエ/Giulio Douhet(1869-1930)
イタリア王国の陸軍軍人、軍事学者。空軍の創始者。
著書『制空』は世界的な反響を呼び、戦略爆撃の思想に影響を与えた。
大学を卒業後、陸軍に入隊。航空戦力の運用を巡り参謀本部と激しく対立。
政府を批判したとして、軍上層部から左遷され、ついには軍法会議にかけられ有罪。
一年の禁固刑が処された。
ウィリアム・ミッチェル/William Mitchell(1879-1936)
アメリカ空軍の父 アメリカ合衆国の陸軍軍人。
18歳でウィスコンシン州歩兵志願兵の二等兵として入隊し、米国陸軍で最年少の23歳で大尉になる。
第一次世界大戦で、敵地を飛行したアメリカ初の飛行将校。
いち早く航空の重要性を提唱するが、当時の大統領から軍法会議にかけられ有罪判決。
階級、指揮権、給与の没収と五年間の職務停止が命じられた。
「エアパワーだけで戦争を終わらせることができる」
「この技術は戦争のあり方そのものを変える!」
世界を切り開こうとする冒険心を抱いた二人の男は、たゆまぬ努力と情熱により独自の理論を提唱。
しかし、既存の強い反対勢力からは、"空軍は不要。海と陸だけで十分。""これは軍に対する反抗である!"と、猛反発を受け"反乱者"とみなされた。
後の戦況から2人の主張した正当性、功績、先見の明が認められ、名誉を回復を果たす。
この講座から学べること
世界史上はじめて、空軍の戦略論を創始したのがドゥーエとミッチェルの2人である。本講座ではその戦略論を学ぶ。飛行機が戦争に登場したのは、第一次世界大戦である。その後、飛行機の能力は格段に飛躍し、第二次大戦では主役の1つに躍り出た。彼らは、近未来の空軍の役割を的確に見抜き、彼らの著作は今日に至るまで世界の空軍戦略の基盤となっている。日本は自国を防衛し、経済繁栄の基礎となるシーレーンを守るために、十全な海軍力を必要としている。しかし現在では、海軍が力を発揮するには、空軍の力が必要である。この講座を学習すれば、現在、そして近未来における空軍の役割、日本の防衛に必要な空軍力が何であるかを学習することができる。
さらに飛行機のような新しい技術革新が生まれた場合、それにどう対処するかは一国あるいは一企業の命運を決する。新しいテクノロジーの登場に私たちはどう対応し、ライバルに一歩先んずることができるのか。その戦略をミッチェルとドゥーエから学ぶことができるだろう。
3つのポイント
- 1 イノベーションのジレンマ
- 限りある資源を将来性のある新分野に投入しようとすると、現行の組織の中核となっている機能への投資を削る必要が生じてくる。 それ故に、成功体験が大きい組織ほど、新分野開発への抵抗が強くなり、大胆なイノベーションを行なうことが出来ない。 これが「イノベーションのジレンマ」といわれる現象である。実際の歴史の実例を学ぶことでイノベーションのジレンマとその解消法がわかる。
- 2 ブルー・オーシャン戦略
- 競争の激しい既存の市場をレッド・オーシャンと呼び、競争のない未開拓市場をブルー・オーシャンと呼ぶ。 ドゥーエとミッチェルの空軍創設論は、従来の陸軍や海軍というレッド・オーシャンを避け、空軍戦力という新たな作戦領域を開拓し、そこに おいて他国に対する圧倒的な優位性を獲得しようという試みであった。
- 3 零戦
- 日本は海軍中心に航空兵力開発に集中し、九六式海軍戦闘機(堀越二郎・新設)で世界水準に到達。昭和15 年、つまり皇紀 2600 年に正式採用された為、「ゼロ戦」と愛唱されるようになっ た。ゼロ戦はシナ事変で大活躍し、蒋介石の中華民国空軍をたちまち壊滅させてしまった。一時的に世界最強の戦闘機であった。
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[第1章] 技術戦略の停滞と革新
- 「"戦場"は変化する」天空・深海・電脳・宇宙...技術革新が生み出す壮絶な歴史
- 「まずは都市から狙え」戦争のルールが一変した日…空軍創設が招いた残酷さ
- 「足枷になった核ミサイル」"強すぎる兵器"が自らを縛りつける論理
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[第2章] ドゥーエとミッチェルの空軍戦略
- 「WW1の最新兵器」戦車、複葉機、潜水艦に毒ガスまで…現代に続く兵器競争の始まり
- 「"防衛不能"な空の攻撃」制空権獲得こそが勝利だ…最先端を見抜いたドゥーエの慧眼
- 「陸・海軍はもういらない!」軍部の怒りを買って禁固一年…それでも綴った空への情熱
- 「ドイツには爆撃が効かない...」落とすほどに強くなる? 連合国の空襲攻撃の謎
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[第3章] 日本の体験1:空母と海軍航空
- 「最強を誇った日本海軍」欧米が押しつけた軍縮条約が、日本の空母を生み出した皮肉
- 「旧技術が進歩を阻む」現状維持か?リスクを取るか?軍人が陥った大艦巨砲主義の罠
- 「ミッドウェー海戦の落とし穴」たった数度ズレた偵察機の航路…海軍の奢りが招いた悪夢
- 「大成功し、大失敗した真珠湾」 国力で劣る総力戦の始まり…米国民を覚醒させた失態
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[第4章] 日本の体験2:零戦の栄光と悲劇
- 「堀越二郎と零戦」中国軍を蹴散らしたデビュー戦…1機も墜ちない伝説の戦闘機
- 「"ゼロ"を見たら逃げろ」アメリカ軍にここまで言わせた…抜群に優れた日本の技術力
- 「防弾のない戦闘機」限界まで軽い機体で勝つ!撃たれたら終わりの侍の精神
- 「零戦の天敵:"ヘルキャット"」質で勝っても量で負けた…アメリカの猛追を許した戦略の差
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[第5章] 日本航空兵力の興亡
- 「高評価を得たカミカゼ特攻」冷静かつ合理的…アメリカが日本を評価した理由
- 「零戦のサムライ・坂井三郎の決断」米軍人も驚愕…ノコギリで切り捨てた"あるもの"とは
- 「熟練パイロットは使い捨て」救援は武士道に反する?…自ら首をしめた日本の精神性
- 「完成してれば日本が勝てた?」幻の戦略兵器"Z機"とニューヨーク大爆撃計画
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[第6章] ビジネス・人生の応用編
- 「ライト兄弟・ガリレオ・藤井厳喜」戦略の冒険者たちに学ぶ現代の生き方
- 「あなたのイノベーション戦略」敵を倒すより味方を増員…組織の変化を生む"ステップゼロ"
- 「国家はいつも現状維持」勝者のおごりをどう防ぐか?ジレンマを打ち破る唯一の方法
- 「シャーペン・家電・マスク」キーワードは"変身" シャープに学ぶ時代に負けない成功戦略