STRATEGIST
『戦略の魔術師』究極の楽して勝つ戦略論
リデルハート
LIDDELL=HART
リデルハート
ベイジル・リデル=ハート/Basil Henry Liddell-Hart(1895-1970)
イギリスの軍事評論家、軍事史研究者、戦略思想家。
リデルハートはパリのイギリス人牧師の家庭に生まれた。愛国心に溢れ、幼い頃から戦地にロマンを抱き、13歳から海軍学校に志望。
第一次世界大戦ではイギリス陸軍将校として戦地へ。戦車、機関銃、毒ガス…残酷化した世界大戦を目の当たりにし、いかに味方の被害を抑え、戦いに勝つかを考えるようになる。軍人からジャーナリスト、戦略家に転身。古代ヨーロッパから20世紀までの戦史を徹底研究、孫子やクラウゼヴィッツからも影響を受け、「間接アプローチ戦略」を提唱。
その著書は瞬く間にベストセラーとなり、国務大臣アドバイザーを務め、英国首相チェンバレン、チャーチルにも進言をする。「犠牲を最小限にして勝つ」という考えに根ざした戦略は「戦わずして勝つ」の究極系として「近代西洋の孫子」とも評され、「20世紀最大の戦略家」と言われるまでになった。
この講座で学べること
19世紀の欧州を代表する戦略理論家がクラウゼヴィッツなら、20世紀の欧州を代表する戦略理論家はリデルハートである。本講座では、現在進行中の米中経済戦争でもアメリカが応用しているリデルハートの「間接アプローチ戦略」の本質とその応用、更にその限界について研究する。
リデルハートの「間接アプローチ戦略」は分かりやすく言えば、海軍力を用いた敵国の経済封鎖のことである。これにより味方の損害を最小にし、敵国の戦意および士気を喪失させることができる。
「間接アプローチ戦略」は、幅広く社会に応用が出来るものであり、対人関係においてすら有効である。リデルハートは孫子に似て、究極の「楽して勝つ」方法を私たちに教えてくれる。この講座を見て「間接戦略」をマスターすれば、企業間競争にも個人生活でも、効率的に勝ち抜く英知を習得できるだろう。
3つのポイント
- 1 間接アプローチ戦略
- 第一次世界大戦の従軍により、残酷化した不毛な消耗戦を体験。ナポレオンの実践を理論化したクラウゼヴィッツの直接的な戦争を批判し、著書『戦略論』で提唱したのが「間接アプローチ戦略」。被害、損失を最小限に抑えるためにはどうすればいいか?を徹底して考え抜かれた戦略である。直接全面対決を避ける間接アプローチ戦略は米ソ冷戦の時代において復活した。
- 2 撹乱-ディスロケーション-
- どのようにして自軍の被害、損失を最小限に抑え、短期で決着をつけるのか?という問いに対して、リデルハートが出したのが、3つのキーコンセプトである。敵を1.攪乱 (dislocation)させ、 2.戦果拡大 (exploitation) 、3.麻痺 (paralysis)させることで、敵の戦力を無力化する。敵の物理的兵力よりも、戦闘の意思という精神面に着目し、戦争の早期集結を狙ったのが特徴。
- 3 電撃作戦-ブリッツ&クリーク-
- 間接アプローチ戦略の応用として、ヒトラーが利用したのが「電撃作戦」である。当初、リデルハートの戦略はイギリスでは評価されなかったが、ヒトラーがそれを用い見事に成功。この作戦を用い、10年間の月日と総額5000億円を投じて作られたフランス軍の世界最大級の地下要塞(マジノライン)は、いとも簡単に攻略されてしまった。
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[序章] 受講者からの1通の手紙
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[第1章] リデルハートの生涯
- 「"間接アプローチ侵略"の誕生」ヒトラーが使ったリデルハートの戦略
- 「20世紀の戦争の現実」戦車・毒ガス・機関銃…突然戦争が残酷化したワケ
- 「英国流の戦争方法」封じ込め政策、抑止力の誕生
- 「インダイレクト戦略」核兵器の誕生とリデルハートの復活
- 「トランプの対中戦略」リデルハート戦略を使わざるを得なくなった現代
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[第2章] 間接アプローチ戦略 3つのキーコンセプトと8つの金言
- 「損害を極小化する戦略」戦略の錬金術師と言われた由縁
- 「自滅する戦略」実行厳禁!やると負ける"2つの消極的原則"
- 「ドイツの戦車 vs フランスの地下基地」10年越しの秘策…かったのはどっち?
- 「失敗する攻撃・成功する攻撃」勝ちたいなら狙うべきあるタイミング
- 「義経の作戦と法皇の謀略」平氏を惑わせた奇襲の全貌
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[第3章] 間接アプローチ戦略の誕生と批判
- 「総力戦と絶対戦争」大戦間の英国外交を指導した男
- 「電撃作戦」最強ヒトラーの秘密-ブリッツ&クリーク-とは?
- 「無条件降伏のメカニズム」なぜ指導者は無理な要求をするのか?
- 「日本三大奇襲」桶狭間、厳島、河越…知ると面白い奇襲の仕組み
- 「第四次世界大戦論」エスカレートする戦争が待つ結末とは?
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[第4章] ビジネスと個人生活への15の応用
- 「部下を直接褒めちゃダメ?」リデルハートを使った人間関係の勝ち戦
- 「A社 vs. B社の戦い」古典戦略で読み解く安売り競争のメカニズム
- 「AmazonとUberとApple」戦略で紐解くユニコーン企業の共通点
- 「心理的撹乱の具体例」最小予期線・最小抵抗線と店舗ビジネス
- 「リデルハートの防衛術」心理的撹乱はこうして防ぐ
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[第5章] 三代戦略家 孫子・クラウゼヴィッツ・リデルハートの徹底比較
- 「尊師とリデルハート」近代西洋の孫子といわれる由縁
- 「情報重視の孫子vs情報軽視のクラウゼヴィッツ」リデルハートの答えとは?
- 「情報戦の本質」三代戦略を読み解く超限線
- 「米中戦争はアメリカが負ける?」中国を読み違えた…甘すぎる米陸軍の戦略
- 「日常で使えるリデルハート」弱みは見せたほうがいい?奇襲のチャンスを作る方法
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[終章] 三代古典戦略家のまとめ